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路線価図の誤りを指摘し、土地の相続税評価額が下がった事例
2022.06.08
相続についてお悩みの方
以前より関与をさせていただいておりましたY様のお母様が亡くなられ、当事務所で相続税の申告をさせていただくこととなりました。
相続税の申告にあたって
Y様のお母様は自宅、賃貸用マンション、貸家など複数の家屋が建っている大きな土地を所有されておられました。
この土地の評価にあたり路線価図を確認したところ、正面の道路だけでなく、側方の一部も路線価の付された道路に接していました。
2つの道路に接している方が、1つの道路のみに接している場合より利便性が高まることから、相続税評価額は高くなります。
試算段階では路線価図のとおり2つの道路に接しているものとして評価していたのですが、Y様からの聞き取りを進めていきますと、側方の道路は私道であり、Y様側には所有権が無く、Y様側からの通行は出来ないように壁をもうけてあるとのことでした。
当該私道の利用実態はないにもかかわらず、路線価図上では接道していますので、このままでは高い評価をせざるを得ません。当然、税務署も2つの道路に接している土地と見るでしょう。
この現状に疑問を持ち、詳しく調べることにしました。
現地で利用状況を確認し、調べを進めたところ、その私道は裏手一団の住宅地開発の時に指定を受けた建築基準法上の位置指定道路であったことが判明しました。
さらに、その私道は本来行き止まりであるにも関わらず、行き止まりの先から他人所有の通路を抜けて、通り抜けができる道であるかのように路線価が付されていたのです。
そもそも路線価とはどのような道路に付けられるのでしょうか。
路線価は、財産評価基本通達で「宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線(不特定多数の者の通行の用に供されている道路をいう。)ごとに設定する。」とされています。
ここでは、道路について公道であるか私道であるかは述べられていません。私道に路線価が付されるケースもあるということです。
ですが、重要なポイントがカッコ書き部分の不特定多数の者の通行の用に供されている道路というところです。簡単に言えば色んな人が通る道です。
つまり、行き止まり私道はその道路周辺の住民しか使わないので、不特定多数の者の通行の用に供されているとは言えず、本来路線価が付されるべき道路ではないということです。
今回のケースでは、一見通り抜けができるような道であったため、税務署が誤って路線価を付したものであるという結論に至りました。
大野会計事務所の対応
税務署に対して根拠をもって路線価図の誤りを指摘し、交渉を重ねた結果、路線価図の誤りを認めていただくことができ、翌年分の路線価図からこの私道に付けられた路線価は削除されることになりました。
これにより当該土地の相続税の評価額が下がり、数百万円の税額を減額することに成功し、Y様にも大変喜んでいただくことが出来ました。
税務にあたり、ひとつの側面だけで判断するのではなく、本当にそれが正しいのかと疑問を持ち、徹底的に調べ、誤りを見抜く。そのためには税法への深い理解が必要です。
何よりもお客様のために、何か出来ることはないかという視点と情熱を持つことが重要であると再認識した事例でした。