大野会計コラム

税理士によって税務調査の結果が全く異なるという事例

2020.01.08

税務調査について

税務調査のご相談

先日ある法人様より税務調査について困っているとのご相談を受けました。

その法人様は、3ヶ月前に税務調査を受け、顧問税理士の先生にその対応を任されていたのですが、その顧問税理士の先生と税務署の間では話がまとまり、あとは修正申告書を作成し提出するのみという段階になっていました。

しかし代表者の方が修正申告の内容を聞いてみると到底納得がいかない内容となっており、これでは税務署の言いなりではないかと、顧問税理士と税務署の調査官に対し、大きな不信感を抱いたということなのです。

 

 

代表者の方に税務調査の経緯についてお話をお聞きしたところ、驚いたことに税務署から指摘された事項については具体的な根拠資料の提示がなく、税法に照らしても何を根拠に否認されているのか明確ではないものでした。

また、税務調査の手続きの進め方にも問題があり、質問応答記録書という税務署が作成した指摘事項をまとめた文書に署名を求められたとのことですが、税務署の内規では調査官がその内容については読み上げをし、説明をした上で署名してもらうこととなっておりましたが、読み上げが行われず、十分な説明がないまま代表者の方に署名を求めるというお粗末なものでした。

 

弊所としては本当にそんなお粗末な調査が行われたのか不思議に思い、税務署に行き担当部署の統括官(一般企業の課長に当たります。)に確認を行いました。

 

確認を行ったところ、やはり具体的な根拠資料に基づかず理論値等による推定金額により否認を行っている、また税法に照らした具体的根拠が明確でない、ということがわかりました。

指摘の根拠となる証拠が抑えられておらず、さらに税法の根拠も曖昧なまま納税者に修正申告を求めるという、本当にそんなお粗末な税務調査が行われていた、ということに驚きを抱いたと共に、顧問税理士の先生もそれを認めて修正申告書を提出しようとしていたという事にも驚きました。

 

また、その統括官の対応がこれまでに例がないほど今回の調査対応を困難なものとしたのですが、早く今回の税務調査をまとめましょうと切り出しながら、自らの主張をまったく曲げない上、指摘事項を認めないと交際費の支出について相手方の会社にも反面調査を行うぞ、また否認金額についてもさらに増加させるぞ、と脅しをかけてくるのです。

 

当初の顧問税理士の先生は、恐らく税法の理解に乏しく指摘事項について税法的に無理があることを理解されておらず、また税務調査の対応に関し経験が不足しているためか、その脅しの手法に負けてしまい税務署の主張を認めたものと思われます。

 

大野会計事務所としての対応

 

弊所においては指摘事項について根拠に欠ける、また手続きに不備があるということが判明しておりましたので、その点を突いて税務署の指摘事項のほとんどについて認められないと主張しました。

また、代表者の方の意思も確認し、反論するための文書を作成した上で代表者の方に丁寧にレクチャーし、代表者の方からも税務署に対し反論していただきました。

 

税務署側は当初、同じ主張を繰り返すばかりで話が平行線となりましたが、粘り強く交渉し、最後には弊所の主張が認められました。

税務署の指摘事項について疑問を抱き、一つ一つ丁寧に確認した上、明確な根拠を基に反論をした結果、税務署の主張していた金額より1,000万円超の税金を減らすことができ、代表者の方には大変喜んでいただけました。

 

税務調査に対応するためには、豊富な税法の知識に基づき税務署の主張が妥当なものか判断する力が必要です。

また税務署の内部事情や調査官等の心理を理解した上で、どのように交渉すれば良い結果が得られるか、といった豊富な経験に基づく対応力も求められます。

今回はそのような事が改めて認識された事例かと思います。