大野会計コラム
税務調査における効果的な対応について(所得税及び法人税のよくある事例)
2018.08.09
税務調査について
事例1. 税務調査官から「青色専従者給与が高い」との指摘を受けた。
この指摘を受けるのは、だいたい調査初日の午後4時ごろ(帰り際)です。
ベテランの税務調査官が指摘することが多く、彼らの経験上、納税者がホッとしている、または疲れている時間帯を選んでいることも特徴です。
■こういった「専従者給与が高い」と指摘してきた場合には、すぐに「では、いくらの金額が適正なのですか?」と逆に税務調査官に質問してください。
おそらく税務調査官は回答できないと思われます。
その理由は、次の通りです。
- そもそも準備調査の段階では、いくらの金額が適正なのかはわからない。 またその段階で下記①~④により適正金額を算出するのは非常に時間がかかり、不可能に近い。
- 税務調査官は概ね更正決定までは考えていないが、相手方が「専従者給与が高い」という話に動揺したら「否認」して修正申告にもっていこうと考えている。案外簡単に修正申告に応じる納税者が多い。
- そもそも他に否認事項がない場合に限って、専従者給与の問題を取り上げるケースが多く、実は準備調査の段階でも優先順位は低い。
もし、仮に更正決定で否認しようとすると、膨大な時間と労力を要して下記①~④のように同仕事・同業種・同規模等を調べなければならず、費用対効果があまり期待できない。
そのため、専従者給与の金額が高い「理由」がある程度しっかりしていれば否認されないと思います。
青色専従者給与の適正金額の参考事項
- 仕事の内容(労働期間、労働の性質、提供の程度)
- 事業主の業種、規模、収益の状況
- 他の使用人の給与金額との比較
- 同業種、同規模給与平均値との比較
■調査日前の事前打ち合わせを念入りに。
税務調査の8割は調査前の「打ち合わせ」で勝敗が決まります!
事業専従者本人が仕事の重要性(給与が高い理由)を税務調査官にしっかりと説明できるよう事前打ち合わせをしていれば、専従者給与は否認されないと思われます。
例えば、
- 他の使用人より職責が重い→経理や掃除だけではなく、入居者への家賃滞納の督促や借入金 等の金融機関との交渉など職責が重い仕事を行ってもらっている。(不動産賃貸業等の場合)
- 他の使用人より労働時間が長い→土、日なく遅くまで仕事をしてもらっている。
…など。
■否認される場合とは?
- 専従者本人が全く仕事を手伝っていない。→全額否認。(特に多いのが個人医院、不動産賃貸業)
- 不動産所得が事業的規模ではない(5棟10室未満)。→全額否認。(不動産賃貸業の場合)
- 専従者にもかかわらず、調査当日も専従者本人が立会いしていない。→いつも来ていないと思われる。
- 専従者本人が仕事の内容についてほとんど説明できない。→仕事をしていないと思われる。
■調査中は相手(税務調査官)の土俵では話をしない。
自分の土俵で話をすることが重要です。
■法人調査への応用は?
この対応(考え方)は、親族への役員給与(非常勤役員)も同じです。
事例2. 事前通知なし(任意調査)でいきなり税務調査官が会社に来た。
① 社長(個人事業主)が既に税務調査官と対応してしまった場合
■税理士事務所に電話します。 本日の仕事等の都合を聞いて、対応できない状態(予定がある)であれば税務調査官に調査日の変更をお願いし、帰ってもらいます。 その際「税務調査には協力しますから」を強調すること。
日を改めてもらうのは、
- 税理士立会いの下で調査を受けること
- 「事前打ち合わせ」等の準備を整えることが目的です。
税務調査官が調査を強く要請してきた場合には、税理士に連絡して、担当統括官(上司)に日時変更の依頼をお願いしてもらってください。
直接税務調査官に話すより担当統括官(上司)と話しする方が理解されやすいのです。
現場の税務調査官は前へ進むことしか考えてないケースが多いので…。
■なお、罵声を浴びせたり、調査拒否等、税務署と本気でケンカするのは避けた方がいいと思います。
もし、つい感情が高ぶって言ってしまったら、次回税務調査官に会ったときに「失礼な事を言ってすみませんでした」一言謝る勇気(大人の対応)も重要です。
(来た税務調査官に、突然の調査を行う理由を聞いたり、不快感を表すまではOKです。)
② 社長(個人事業主)が未だ税務調査官と対応していない場合
社長が未出社(例えば、自宅、出社途中)、連絡が取れない、社内にいるが未面談(例えば、本社ではなく工場にいる等)の場合
■対応した役員もしくは社員が、税務調査官に「社長が1日中営業等の仕事で忙しく、会社に帰ってくるのが遅く(午後6時以降)立ち合いができない」旨伝えて、調査日の変更をお願いする。
くれぐれも「税務調査には協力しますから」を強調すること。
■税務調査は「審理の戦い」ではなく「心理の戦い」です。
税務調査官は、いろいろ質問をしながら社長(事業主)や税理士を観察しています。
大抵の社長(事業主)は問題のない資料について聞かれたとき、饒舌に、聞かれていないことまで話す傾向があるのですが、一方グレーな資料について聞かれると、目が泳いだり顔が赤くなったり青くなったりして口数が少なくなります。
デキる調査官はそこを突いてきます。
趣味の話を振られて相手も同じ趣味だと、つい嬉しくなって余計なことまで話してしまうことにも要注意です。
特に「車」好きの社長(事業主)は「社用車」の車種に注意してください。
スポーツカーや流行りのSUVだとプライベートに使っていないかどうか、水を向けられます。
相手(税務調査官)の土俵で相撲を取っているふりをして、実はこちら側に有利に事が運ぶように調査を進める(自分の土俵で相撲を取る)ことが重要です。
つまり、税務調査官との「心理戦」です。
言いなりになる必要はなく、こちらの主張すべきところはしっかりと主張する。
ただし相手の立場も考える。
相手の懐に飛び込んで誠意をもって接すれば、きちんと対応してくれます。
そして、それにはやはり事前の打ち合わせが欠かせません。
ご自身の、税金に対する考え方について税理士と日頃から意思疎通を図ること、そして調査前、調査中も報告・連絡・相談を密に取ることが重要です。