大野会計コラム

自社株評価(取引相場のない株式の評価)

2017.08.08

会社経営者・個人事業主の方へ

同族会社のオーナーが自社株を後継者等へ売却する、あるいは贈与する、といったケースはよくあることかと思いますが、その際にはその自社株についていくらで売却、あるいは贈与するかがポイントとなります。
その場合「いくらで」を決めるために自社株の評価を行い時価を算定する必要があります。

オーナーと関係がある人や会社へ売却等する場合は、オーナーのさじ加減で取引価格が決まる恐れがあり、そうなると時価とかけ離れた価格で取引される可能性があります。

それを放っておけば、相続が発生する前に自社株を時価よりも低い金額で後継者や後継者がオーナーとなっている関係会社に売却してしまう、といった方法により、相続税を免れることができてしまいます。

そこで、税務上は時価で取引をしなかった場合は、税法で考えるところの時価で取引をしたものとみなして課税する、という考え方があり、時価と実際の取引価格との差額について、追加で譲渡税や贈与税等が課税されるという可能性が出てきます。
そのような思わぬことが起こらないように、自社株の評価を適正に行い時価を算定する必要があります。

上場会社の株式であれば取引所の時価が公表されていますので問題ありませんが、上場をしていない同族会社の株式の場合そのような客観的な時価は存在しないケースが多く、税法で認められる方法により自社株を評価することとなります。

ところが自社株の評価では誰が誰に譲渡するのかといったことや、会社の規模等によっても、その時価の算定方法は異なり、また、所得税、法人税、相続税といった税法を横断的に理解した上での難しい判断が必要となる分野となりますので、高度な専門知識が要求されるものでもあります。

我々、税理士にとっては大変やりがいのある分野ですが、豊富な知識と経験がないと取り組めない分野でもあります。

顧問先様 実例
セカンドオピニオン契約で関与させていただいているB社様より自社株評価のご依頼がありました。
以前より顧問をしていただいている税理士の先生が別にいらっしゃるのですが、株式の評価をその先生に依頼したところ、対応できないとのことで断られたそうです。
B社様は、株式上場を控えておられ、規模の大きな事業経営の法人様です。
社長様の相続対策の一環として、個人で保有されている自社株を、後継者の方が出資する持ち株会社へ譲渡するために自社株の評価が必要とのことでした。
自社株の評価においては、不動産、特に土地や借地権等の評価や会社で保有している有価証券の評価がポイントとなりますが、今回の評価では規模が大きな法人様ですので不動産を多数保有しておられたり、権利関係が複雑な土地に不動産をお持ちであったりと、慎重な判断が要求される案件でした。
また、有価証券としては関連会社の株式や匿名組合の出資金をお持ちでしたので、自社株の評価といっても、複数の会社の株式評価が必要でした。
期限が迫っている中でのご依頼でしたので大変でしたが、無事評価額を算定しお客様にご報告させていただいたところ、これで相続対策を進めることができると喜んでいただけました。