大野会計コラム

不動産を多数お持ちの方の相続税申告

2017.10.12

相続についてお悩みの方

国税庁によると、2015年に亡くなった約129万人のうち、財産が課税対象となったのは約10万3千人、と2014年に比べ約1.8倍に増加しました。

相続税は2015年1月に見直しがあり、非課税となる基礎控除額が以前に比べ6割に縮小され、相続税がかかる方が増加し、当事務所でも年々相続税申告書作成件数が増えております。

相続税の申告内容の特徴として、財産全体のうち不動産の占める割合が比較的大きいため、不動産の評価額が税金に与える影響は大きいこととなります。
不動産は、預貯金や有価証券である金融資産とは違い、税理士によって評価額に大きな差が生じる財産でもあります。

当事務所は不動産オーナーの方が多く、多数所有されている方もいらっしゃるため、不動産の評価額を出来る限り小さくするよう事務所全体で検討を重ねております。

我々税務の専門家だけでなく、土地の専門家である不動産鑑定士や土地家屋調査士の先生方と連携し、土地の形状や近隣の利用状況をひとつひとつ確認しながら評価額を減額できる特例制度を活用し、相続税の引き下げを行っております。

なお、「土地は売却したくない」という方が比較的多く、売却せずに納税資金を確保することについてのご提案に尽力させていただいております。

【実例】

司法書士の先生からのご紹介で関与することになった西宮市のO様です。
10年程前に土地の一部が、亡くなられたお父様から相続人様へ贈与されていましたが、相続時精算課税贈与(注1)を選択されていたため、相続が発生した際その贈与された土地は相続財産に加算することとなり、相続税対策の効果はありませんでした。
相続人の皆様は、相続が発生したときに贈与財産を加算しなければならないことをご存じなく、当時の顧問税理士からも説明は受けていなかったそうです。
また、生前に株式を保有する同族会社から役員退職金の支給を受けられていましたが、勤続年数等から考慮するとあまりに支給額が少なく、その同族会社の株価の引き下げを享受することもできませんでした。
財産の総額や贈与された土地などから判断すると、それが適切なアドバイスだったのかと疑問が残るところであります。
この方は、不動産を多数お持ちの地主様であり、土地の評価額を下げることが重要であると考え、土地を一件一件現地調査させていただき、個々の個別的事情を確認しながら不動産鑑定士等の専門家の意見を踏まえ評価減を実行させていただきました。

先代より受け継がれている土地や借地権など数多くの不動産を所有されており、土地の形状や権利関係が複雑で評価額を算定するにあたり時間を要しましたが、想定していた相続税額より大幅に軽減できたため、喜んでいただけました。

(注1)相続時精算課税贈与とは、60歳以上の親から20歳以上の子又は孫への贈与なら2,500万円まで贈与税がかからない制度です。但し、相続発生時においては、その贈与財産の贈与した価額を加えた合計額で相続税を計算する必要があります。