大野会計コラム
会社を活用した相続税対策について
2015.11.10
不動産オーナーの方
目次
法人税減税を視野に入れた対策が重要
平成27年の相続から相続税は、基礎控除は現行の60%に引下げられ、最高税率は50%から55%に引き上げられました。
所得税も給与年収1,000万円以上の人は、給与所得控除額の上限額が段階的に引き下げられ、最高税率は40%から45%に引き上げられます。
また、相続した土地等を相続税申告期限後3年以内に譲渡した場合にも相続した土地等の取得費に加算する金額を、その者が相続した全ての土地等に対応する相続税相当額から、実際に譲渡した土地等に対応する相続税相当額しか取得費に加算されなくなりました。
一方、法人税は、国際競争の観点から基本税率は引き下げられ、今後もさらに引き下げが検討されています。
このため、個人オーナーにとって、個人で資産運用するよりも法人をうまく活用することで税負担を軽減しながら相続税対策を実行することが今後賢明な選択になるだろうと考えられます。
これからは、まさに税制全体を見渡した対策が求められています。
個人から法人へ所得、建物を移転
多くの個人オーナーは、不動産管理会社を設立し、その法人に管理料を支払うというやり方で経費計上しています。しかしこの方式では、税務調査では適正管理料について数~10%程度しか認められず、毎年多くの所得税が課税され、また将来相続が発生したときの税負担も高額になると予想されます。
「法人を設立したにもかかわらずそれほど節税にはならなかった」と後悔しているオーナーが多いというのが現状です。
私の事務所では10年以上前から「個人所有の建物を法人へ移転し、不動産経営の全てを法人として行う」やり方をお勧めしています。
ポイントは以下のとおりです。
(前提)
後継者が出資する不動産管理会社を設立
オーナー自身が株式を出資すると相続が発生した場合、相続財産に加算されるため、後継者が出資します。
個人所有の収益不動産の建物を法人へ譲渡
譲渡は、適正な時価(帳簿価額)で行います。建物を帳簿価額で譲渡すれば譲渡税がかかりません。
土地の譲渡については、コストの問題や個人の譲渡税の課税問題があるため特に必要としません。
(効果)
個人に地代を、後継者には役員給与を支払い、所得等分散
法人に移転した所得は、個人には地代を支払い、役員給与で所得分散され、個人と法人のトータルの税金が軽減されます。また、家賃収入により増加した預金等および移転後の建物も法人の資産となります。
土地の地代と相続税評価額の軽減
法人が固定資産税の2~3倍を年地代(通常の地代)として個人に支払えば、土地の相続税評価額が自用地の80%に軽減されます。個人所有時の貸家建付地評価とほぼ同程度の減額となります。
(注意)
借地権の認定課税の回避のため税務署への届け出が必要
個人から法人へ建物を譲渡しますと、建物を所有している法人は地主である個人に対し借地権の課税問題が発生します。この問題を回避するため「土地の無償返還に関する届出書」を税務署へ速やかに提出する必要があります。