大野会計ブログ

グランドフィナーレ

2014.07.29

大野会計ブログ

(木下 洋子)

先週末、近所の行きつけのパン屋さんがお店を閉じられました。

閉店の告知以降、連日早々にパンが売り切れるようになりました。

あの美味しいパンが食べられなくなるということで、常連さんが購入するパンの量を増やしたり、ご無沙汰だったお客さんが慌てて買いに来たりしたのでしょう。

私達も、いつも購入している量さえ確保するが難しくなっていました。

もともと地元で人気のパン屋さんでしたが、閉店に向けて、益々の大繁盛でした。

上質な素材と確かな技術で作られたカスタードデニッシュの生地はサクサク、トッピングのクリームは甘すぎず、しかしコクがあり、夫はこれが大のお気に入りでした。

食パンはシルクのようにきめ細やかで、トーストすると、サクっとした食感の後に口のなかに生地がなめらかに溶けて旨味が広がり、それはもう絶品でした。この食パン、予約だけで当日分が売り切れになることもしばしばの人気商品でした。

他にも油で揚げてないカレーパン、アップルパイ等美味しいパンがたくさんありましたので、何を買うか毎回悩んでしまいました。

ご主人は、大阪市内の某老舗ホテルで40年間パン職人として勤務されました。退職後は郊外にあるご自宅の一部を店舗にして、開業し、さらに14年くらいパンを作り続けてこられました。

なんと通算54年以上もの年月をパン作りに捧げてこられたのです。

退職後に開業されたのは、ホテルという看板無しで自分がどこまで出来るか挑戦してみたかったとのこと。

閉店を惜しんで足を運ぶ多くお客さんの様子やお言葉から、自分のしてきたことは間違っていなかったかな、と思われたそうです。

閉店するのはご主人の健康上の理由からで、お医者さんの「余生のための時間も残しておいてください」の言葉で辞める決心がついたそうです。

朝は2時30分起き、熱いパン焼き機の側で作業するパン職人の仕事は非常に過酷だそうです。

 

ご主人の焼いたパンをお店に並べたり、注文を受け付けたり、食パンをカット等するのは、奥様の役割で、美味しい食べ方や保存の仕方、温め方等をよく教えてくださいました。

気さくで優しい奥様とのおしゃべりも楽しみでした。

この住宅地で長い間、美味しい上等なパンを、手頃なお値段で提供してくださり、ありがとうございました。

最後のパンを噛みしめながら、美味しいパンと素敵な出会いに感謝しました。