大野会計コラム

口頭でも「死因贈与契約」は成立する?

2026.08.03

不動産オーナーの方

相続についてお悩みの方

先日、顧問先のN様から「父が亡くなったため、相続登記をお願いしたいので司法書士を紹介してほしい」とのご相談をいただきました。

そこで、日頃から連携している司法書士の先生をご紹介し、N様のもとへご訪問いただくことになりました。

後日、その司法書士の先生からご連絡がありました。

N様は「父が所有していた土地を、R子(N様のお子様)へ引き継ぎたい」と希望されていますが、お父様は遺言書を作成されておらず、「遺言書がない以上、お孫様へ土地を引き継ぐ登記を行うことは難しい」と説明したとのことでした。

R子様に登記を移すには、N様がその土地をいったん相続してから贈与、ということとなり相続税と多額の贈与税の支払いが課せられてしまいます。

N様もお父様も、遺言書がなくてもお孫様への相続は可能とのご認識だったようで、司法書士の先生の説明に大変困惑しておられました。

 

N様のご希望を何とか実現できないかと考え、私どもはすぐに別の司法書士の先生へ相談しました。

すると、その先生からは「可能ですよ」とのお返事をいただいたのです!

N様のお話では、お父様は生前、R子様に対して「自分が亡くなったら、この土地をあなたにあげる」と伝えておられ、R子様もその内容を了承し、また、唯一の法定相続人であるN様も、その意思を尊重されていました。

このような状況であれば、「死因贈与契約」が成立している可能性があります。

死因贈与契約とは、「自分が亡くなったら、この財産をあなたにあげます」という契約です。この契約は書面だけでなく、口頭でも成立するとされています。

そのため、契約が成立していたことを証明する書類を法務局へ提出することで、R子様名義への所有権移転登記が可能とのことでした。実際に、その司法書士の先生も同様の案件を取り扱ったご経験があるとのことでした。

この内容をN様へお伝えすると、大変安心されたご様子でした。

と同時にN様の不安を早い段階で解消することができ、私どももほっと胸をなで下ろしました。

 

その後は、その司法書士の先生に登記手続きをお願いし、通常とは異なる手続きでありながらも、スムーズに進めていただくことができました。

また私どもも、お孫様への死因贈与を前提とした相続税申告を滞りなく終えることができました。

 

今回の事例を通じて、改めて感じたことがあります。

一見すると実現が難しいと思われることでも、すぐに諦めるのではなく、知識や経験のある専門家へ相談し、あらゆる可能性を検討することが大切です。

そのためには、自分たち自身が日頃から知識を磨き続けることはもちろん、各分野の専門家とのネットワークを築き、お客様にとって最善の解決策をご提案できる体制を整えておくことが欠かせません。

今回の出来事は、私どもの仕事の原点を改めて実感する貴重な事例となりました。