大野会計コラム

海外不動産による節税スキームとは

2018.07.27

不動産オーナーの方

富裕層の中で最近話題になっている節税に海外不動産投資があります。

「何が節税になるのか」と申しますと海外にある中古の収益物件の建物が日本国内の収益物件と比べ高く評価されることにより減価償却費が多く計上できることです。

アメリカやイギリスではほとんど地震がなく、しかも不動産の中古市場が充実しているため、築100年近く経っている収益物件が不動産市場で売買されています。

 

例えば、イギリスで1億円の木造の収益アパート(築25年)を個人で購入すると、居住用の法定耐用年数22年が経過しているため、中古木造アパートの法定耐用年数は、わずか4年(簡便法:22年×0.2)です。

土地代を仮に2,000万円と高く仮定(イギリスでは土地価額は安いです)しても、減価償却費は、毎年2,000万円(建物8,000万円÷4年)計上できます。

物件の購入者は、所得税(住民税含む)率を仮に50%とすると、所得税申告によりなんと毎年1,000万円もの節税ができます。

しかもその購入物件を5年経過後に売却すると、譲渡益に対して約20(正確には長期譲渡税率20.315)%の軽減税率で済みます。

仮に、1億円で売却できたとしますと、譲渡益は、8,000万円になり、その譲渡税は8,000万円×0.2=1,600万円になります。

4年間の所得税節税額4,000万円-5年後の譲渡税1,600万円

すなわちトータルの節税額は2,400万円にもなります。

 

そもそも中古住宅の実際の耐用年数(新築から滅失まで)は、イギリスでは約80年、アメリカでは約66年、日本はたった約32年だそうです。

欧米では新築と比べ中古であっても不動産の価額がほとんど下がらない。

そこに目を付けた不動産業者が富裕層向けに節税スキームをセミナー等で提案しています。

 

しかし、この節税方法はやりすぎではないかと、会計検査院が平成28年11月7日に国に対して「国外に所在する中古の建物に係る所得税法上の減価償却費について」の報告書で指摘しています。

最近では消費税の還付スキームの改正(増税)など会計検査院の指摘で改正となった税制も多くあり、しかも指摘後すぐに改正されています。

 

このような状況から近い将来、税制改正より海外不動産の減価償却費の見直し(増税)が行われるのは間違いないと思われます。

今所有の物件まで見直しがあるかどうかわかりませんが、今後購入される方は減価償却費の改正があることに十分留意していただく必要があります。

(注)わかりやすく説明するため上記計算には、家賃収入、管理料等は含めていません。